書評


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2004/ 3/ 3 「無痛文明論」 森岡正博著
1/23読了。

(あらすじ)
 人類の文明は、快楽を求め苦痛を避ける、できる限り現状維持していたい、それでもすきあらば拡大・発展したい、全てを予測可能にして制御したい、という 「身体の欲望」 に突き動かされて発展してきたが、現代に至って一つの完成形 「無痛文明」 に近づいていると著者は見る。無痛文明においては人間は自分自身を植物人間、あるいは家畜のような受動的な存在に姿を変えていくが、そこからは 「生命の喜び」 が根こそぎ奪われる。今こそ自分の中から湧き上がってくる身体の欲望、そして社会的に組織化されたその欲望が形成する 「無痛奔流」 に打ち勝ち、「生命の喜び」 を奪還する孤独な闘いをはじめることが必要だ、と彼は語る。壁にぶつかってもがき苦しみながら自己変容を遂げていくこと、死ぬときに私はこれだけは守り抜いたと誇りとともに言えるものを貫くこと、すなわち己の「中心軸」に沿って生きていくことを著者は自らに課しつつ、読者に対しても呼びかける。