8月上旬読了。小説 「蛇を踏む」(芥川賞)、「消える」、「惜夜記」 の三部よりなる。
あらすじ
「蛇を踏む」 藪で蛇を踏んでしまったら、「踏まれたらおしまいですね」 と、そのまま部屋に棲みつかれてしまう。そうして毎日母親のように食事を作って待っている。勤め先の奥さんもやはり蛇を飼っていて(?)、叔母と名乗るその蛇と一身同体のように暮らしている…。
「消える」 一番上の兄が 「消え」 てしまうところから物語が始まる。「消える」
というのはありふれた出来事で、そこら辺には居るのだけど、姿は見えないという状況らしい。安穏を好む一家では、それをあまり問題にはしていなかったが、隣の団地から上の兄に嫁を迎えることでちょっと問題になる。次兄が代わりの相手となるが、嫁はやがて
「縮む」 羽目になる。家族ごと、団地ごとの意味不明な風習など、現代の諸状況を妄想風にパロディにしている。
「惜夜記」 妄想めいた動物が現れる奇数章と、少女を追い続けながらもいつもスルリと手から抜けてしまうという繰り返しの偶数章との繰り返しながら、川上ワールドが展開されていく。
コメント
「女」 だなぁ、という感じがそこら中に漂う。かと言って岡本かの子のように、こちらに迫ってくるような迫力は感じられず、何だか遠い世界で漂っている風。分裂的な体裁を無理矢理つくっているような感じがする。確かに現代という時代は分裂的ではあるけれど、敢えてそれをそのまま垂れ流しているような、質の悪いニヒリズムが感じられてしまう。コントロールされたおどろおどろしさ? |