書評


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2005/ 9/ 26 「きょうのできごと」 柴崎友香
 8月上旬読了。

 京都の北山に変な本屋(「ヴィレッジ・バンガード」)がある。(さっきネットで調べたら実は全国展開している有名なお店らしい。初めて知った。。。) 本やマンガ、雑貨、CDが雑然と並んでいるのだが、手書きで紹介コメントなどを書いていたりして、何だかセンスの良い店だなぁと感じていた。色々面白いものが転がっているので、ときおり散歩がてらに覗いていたのだが、そこで何となく手にした本の一冊だ。映画化もされているらしい。保坂和志が巻末の解説でえらく褒めていたこともあり、気になってちょっと読んでみた。
 舞台は京都。鴨川デルタのそばに下宿している大学院生と、引越し祝いと称した飲み会。そこに集まった何人かの男女それぞれの目から、それぞれの一日を丁寧に描いている。別段、特別なことがある訳でもない、日常のヒトコマだ。それぞれがそれぞれに勝手なことを思いながら、日々を生きている。それにしても舞台設定そのものがすごい近い世界だな。著者はオレと同じ歳。そこにイメージされている雰囲気みたいなものはそれなりに分かる。
 サラッと。別に何か強烈なものがあるわけではない。現代ってそういう時代なんだよなぁ。感覚のディテールみたいなのを大切にするというか。ここ最近、農業を始めようと勢い込んでいるところもあって、すごく遠くなっていた感覚だと思う。必要性とかそういう次元ではなくて、もっともっとソフトな、感情の流れを大切にしていく時代。洗練された文化?女性的?主観への没入?それが仮に豊かさの上に咲く徒花だとしても、それを踏みにじる必要など何もないじゃないか?それをただ謳歌したっていいんじゃないか?
 京都の時はゆっくり流れている。そこには人をマヒさせる何かがある。緩やかな死の匂い、それが文化と歴史の中を生きるということなのかもしれないけれど。
 オレは、もう一度ここから出てみよう。分かんないことだらけではあるけれど。野蛮人でいいじゃないか。