光のエントロピーに関する考察
はじめに
HTML版 (一部のみ)
論文概要(要旨)
序論
第1章:エネルギー・エントロピー
  1-1 環境問題について
  1-2 エネルギーについて
  1-3 エントロピーについて
第2章:エントロピーの定義について
第3章:光のエントロピー
第4章:光のエントロピーの応用
まとめ
Appendix
 A 量子力学とエントロピーの定義
 B 自由粒子のエントロピー
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はじめに
 ここで紹介するのは今から6年ほど前、私が大学院生の時に書いた修士論文です。当時、私はエネルギー問題や環境問題といった地球規模の問題に関して、 「エントロピー」 という概念を用いて大局的な理解を得ようと考えていました。
 エントロピーとはエネルギーの 「」 を定量的に(数値的に)あらわす概念です。例えば石油を燃やすときには有機物が大気中の酸素によって酸化され、主として二酸化炭素と水になる化学反応が起こるのですが、その際、化学エネルギーの一部が熱のエネルギーに変わります。この変化を通じてエネルギーの 「量」 は一定ですが、その 「質」 は低下します。ではどのくらい質が劣化したのかを表そうとすると、エントロピーという指標を使う必要があります。
 物理学の視点から言うと、宇宙にある存在は、物質も含めて全てエネルギーとして捉えることが出来ますが、このエネルギーの 「質」 は常に劣化に向かっているとされます。これが熱力学の第二法則、あるいはエントロピー増大の法則として知られている法則です。これは我々が生きる宇宙における時間の存在と関係していると私は考えています。
 エネルギー問題、環境問題を考える際、このエントロピーの考え方を全く用いずに、科学的に厳密な議論を行うことは難しいのではないかと私は考えていました。地球規模の問題を考える際にとりわけ重要になるのは太陽光のエネルギーです。このエネルギーにももちろん 「質」 があります。光のエネルギーの量が同じでも、紫の光の方が赤い光よりも 「質」 は良いと言えます。
 地球が太陽から受ける光のエネルギーの量は、地球が宇宙に対して放射するエネルギー(放射冷却などを考えてみてください)の量とほぼ等しいことが判っており、これが地球れている理由です。入ってくる光のエネルギーの質は良く、出て行く放射のエネルギーの質はそれよりぐっと落ちますが、この差こそが私たちの生命を可能にしているのです。私たちが生きる際、食べ物を食べ、呼吸をすることで、地球のエネルギーの質を悪化させますが(汚すと言ってもよいか)、その汚れは最終的には宇宙への放射という形で捨てられているのです。
 こうしたことを定量的に議論するためには、光のエントロピーの理論をきちんと整備しておく必要があります。この修士論文はそのための理論的土台を提供するものとして書かれたものです。

 久しぶりに読み返してみて、とりわけ導入部については粗い文章だなぁとつくづく思いましたが、
参考になる部分もあるだろうと思い、まずは理論的・数学的な取り扱いの入らない導入部のところと、まとめの部分だけをHTML化してみました。よろしければご覧下さい。
 この論文のメインテーマはあくまで 「光のエントロピー」 を定量的に議論するための足場をつくることです。したがって数学的な取り扱いが主となっています。ある程度物理学を齧った人でないと全文を読むのはちょっと厳しいと思いますが、興味のある方は一括ダウンロードしてじっくり読んでみて下さい。
式の展開などについて分からないところがあれば、質問して頂ければできる範囲でお答えします。

(2005/2/1 記)