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日々の雑感
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| 2003/11/3 (Mon) |
言葉の矛盾 |
今日は一日雨が降っている。
頭が痛い。
僕が枯れていく。
どうして？
疲れてる？
僕はどこへ行こうとしている？
世界が崩壊する。
視野が収縮し、魂は遊離する。
ガラクタだ。またもや。
あっちもこっちも。
虚無の波は再び僕を呑み込む。
とりあえずチャリをこぐ。
雨に打たれながら。
ゆるゆると。
滅びに引き摺られるかのように。
波はやがて静かに引いて行く。
。。。
批判をすること
それがどういう意味を持つというのだろう？
真実に近づくため？
そんなものを本当に求めているのか？
確かなものを追うことは共同性からの離脱を伴う。
お前にそれに耐えるだけの精神の力があるのか？
お茶を濁しておいたっていいんじゃないのか？
より良いものを求める
という運動は
終わりを知らない。
もっと厳密に
もっと正確に
もっと丁寧に
どこまでやってもキリはないよ。
ましてや僕の力はいつも限界だらけ。
そうしてそこで切り落とされたものは
やがて自分に突き刺さる
言葉は世界を切り刻む。
バラバラに切り刻んで、
それからカテゴライズする。
それを再び組みなおして
ストーリーが語られる
ストーリーが語られないのならば
刻まれるものはただ虚無化するだけだ
バラバラの世界と
バラバラの自分が
ただそこにガラクタのように転がる
仮にそこでストーリーが作られたとしても
それが完璧であったことなんかあるかい？
それが常に更新されないかぎり、
圧殺機械と化すだけ。
秩序を創り出すことと
秩序に圧殺されることと
世界と一体化しようと思って
必死に言葉を磨けば磨くほど
世界から切り離されていく
それは言葉が抱えた根源的な矛盾。
それはちゃんと理解していたはずだろう？
それにしても、
思考停止のどこがいけない？
ただニコニコ笑って
スーッと通り過ぎさせればいいじゃないか、全てを。
苦しさや悲しみに張り裂けそうになりながら
まだ言葉にしがみ付くなぞバカげてる。
そこからルサンチマンの響きが消えることは無い
神はそこに在る。
僕なんかが余計なことなんかしなくても。
それでいいんじゃないのか？
笑っていられるならば。
感情とともにあるのでなく、
感情に呑まれているとしたら
それは信仰の欠如。
真っ直ぐな思考を続けられることは
それ自体で信仰を持つことと同値
泣き言言うな。
背筋を伸ばして荒野に立て。
磨き足りない。
まだまだ磨き足りない。
自分を、自分そのものをもっと磨け。
世界をそのまま受け止めて
潰されるのだとすれば
それはまぁそれまでのことじゃあないか
常に運動体であれ。
完全に満ち足りた心がふと訪れる、
そんな時があるのを
知っているはず。
信じ続けろ
弱虫。 |
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| 2003/11/5 (Wed) |
柘榴（ざくろ） |
二三日前、下宿に生えている柘榴の実が弾けた。
赤い小さな粒が一杯に溢れてこぼれてきそう。
昨日、部屋の窓から手を伸ばして一つもいで食べた。
真っ二つに裂いて、まずは二粒三粒まとめて口に放む。
なんだか懐かしい味。
甘さはそんなにないけど酸味がきいてて野趣がある。
白い薄皮を剥いでは実をゴソッと手に取って、
種だらけの粒を口の中で転がす。
それでティッシュの上にペッペと吐く。
あんまりキレイに食えるもんじゃない。
時間もかかるし。
ま、そんな時って悪くないんだけど。
大家とは顔を合わす度に庭木の話をしている。
そんなこともあってか、
僕が柘榴を食べたくて仕方ないと思っていたらしい。
6個も7個も持ってやってきた。
古株のお隣りさんに分けてやって、二人でニヤッと笑う。
寂しがりの婆さん。
何だか嬉しそうなんだ、そういうとき。
ここ最近、また内に篭り気味になってた。
波は寄せては返す。
バランスを取るのは容易ではない。
でもその振動を繰り返す中で、
ゆるやかに積み上げられていくものがある。
それを信じろ。それを感じろ。
夜が来て、朝が来る。
闇があり、光がある。
養老孟司の批判をしているうちに、
何だか少し頭が混乱していた。
この本自体が与えてくれる視界は大したもんじゃない。
だけど、対象としている課題そのものは重い。
なかなか簡単に解けるもんじゃない。
人は共同性を志向する生き物。
できるものならそこにまどろんで居たい。
だのにそう簡単に「個」を捨てられぬのは
現代文明社会に生きる僕らの宿命。
「バカの壁」を築く、つまり思考停止しないかぎり、
僕らはその故郷に戻ることを許されない。
資本主義は共同体を喰いちぎる。
ビジネスチャンスはいつも壁の向こうにあるのだから。
醒めた意識はまどろみから引きずり出される。
前に進むことは壁を越えていくことなのだから。
では「バカの壁」無しにもはや共同性は成立しえぬのか？
僕らはそれを模索せねばならない。
「普遍性」というものが成立する。
僕がそれに気付いたのは確か24か25の頃だ。
文化を超えて、時を越えて、
成立する共感が在り得ると言う事実。
揺さぶり起こされた時の感覚を今でもまだ覚えている。
それは同時に、自分の存在を正面から受け止めたときでもあった。
世界が一気に展開した。
以来その余韻は波を打ちながらも僕の内に残り続ける。
他言語を習得するとき、
ある期間を経た後、突然コトバが解るようになるという。
それはその言語に関わる脳の回路が統合される現象らしい。
若いとき、成長途上にあるときほどそれが発生しやすい。
僕自身、高校生のときにアメリカでそれを経験した。
解らないときはどんなに足掻いても解らないのに、
壁を越えたときにはそれが「自然な」「当たり前」なこととして入ってくる。
「わかる」というのは本質的にそういう現象だと思っている。
人はそれぞれ固有の異なる言語を持つ。
たとえそれが同じ国語だとしても、
一人一人が持つ身体も体験も全く別物なのだから。
言語を通じて他者を「わかる」ためには、
あらかじめ言語化されていない無意識の領域に、
了解を可能にするものが蓄えられていなければならない。
己の無意識を認められない意識には、
「わかる」チャンスはやって来ない。
10年前に比べると自分の脳が硬直化しつつあるのを感じる。
それはきっと避け難い身体の経時変化なのだろう。
「わかる」ことは段々と困難になっていく。
でもそれがなんだ。
ただ確率が下がるだけだろ？
「わかる」ことに関して絶望を感じ、
自分をただ外に開いて在ることを止めてしまったとき、
人はもはや共同性を獲得し得ない。
諦めずに可能性を信じること。
開き続けること。
たとえ万に一つだとしても、
「わかる」ということは成立しうる、
ということを否定しないこと。
共同性はそこにしかありえないから。
やがてそれが自分を救うから。
自分の中で熟成されていったものが、
幾百幾千もの自分の粒子が、
日の光を浴びるときがきっと来る。
裂けて弾けて。
あの柘榴のように。
ところで柘榴って日頃書かない漢字だ。
今日高校へ行く途中、二条城のそばに石材店があって、
それが「石留」って名前だった。
木偏をつけたら柘榴。
他愛もないこと。
部屋に転がってるのをまた何粒かつまむ。
サクランボの味にちょっと似てるかも。
今日も雨。 |
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| 2003/11/8 (Sat) |
コンサマトリーな感覚 |
昨夜の夜更かしが応えて遅寝。
そういう時にはいつもそうだけど、
倦怠感と自己嫌悪感が僕にのしかかる。
眠りから覚めぬ頭を振りながらチャリをこぎ、
東大路のファミマにパンを買いに行く。
帰りしな蓼倉橋のたもとにチャリを止め、高野川の堤に腰を下ろす。
堰を落ちる水の音を聴きながら、乱舞する光の反射を眺めるのが好き。
鷺が下から堰をじっと眺めている。
獲物の魚を探しているんだろうか。
スラッと首を伸ばしたその立ち姿は清清しい。
コロッケパンの袋を開けてを食べ始めた頃、
鴨が4羽が飛んできて水面に着水。
さあーっと静かに波が広がっていき、
それは再び緩やかな流れのうちに消える。
二組のつがいか、それとも兄弟か。
バタバタと水浴びをし、嘴で羽をつついて身づくろいをした後、
水面に顔を出したコンクリートの上に一羽ずつちょこんと座り込む。
ふと下を見ると、堤の石の上にパンのこぼれカスが落ち、
蟻が一匹、それをつついている。
そして何を思うのか、酔いしれたようにしばしその場に留まる。
やがてふらふらしながらその場を立ち去る。
僕は130円の紙カップのカフェラテを呑みながらタバコを吸う。
しばらくしてまた別の蟻がやってくる。
目線を移す。
ススキが揺れる岸辺へ。そして水面へ。
小さな魚の群れ。鱗がときおりキラリと光る。
鷺はこいつを捕まえるのかな。
対岸に長髪を束ねた男が三線を抱えて足を組んで座り、
おもむろに沖縄っぽい歌を歌い始める。
遠慮気味に歌っているのか、声は微かにしか聞こえない。
バスのディーゼルエンジン音がそれをかき消す。
川端通。枯れた桜並木。ホリデーインとカナート。
空はうっすら曇り空。
再び観察に意識を引き戻す。
蟻はいつの間にか大群になって、油っこいパンのカスを取り囲んでいる。
すごい数だ。いつの間にか30匹は集まってる。
気のせいかパンが少し小さくなってる。
あ、ズルズルっと2cmほど引き摺られる。運んでるのは2匹。
残りの奴等はアスファルトに沁みだした油分か何かを吸っている。
もと在った場所に群がる蟻はそこを動かない。
ちょっと残酷ないたずら心。
ススキを一本抜き取って、その先で蟻どもをそっと掃く。
それからパンを動かしてみる。
でもほんの10秒もすると、彼らはもと通りの行動を繰り返してる。
別に何も変わらないか。まぁそんなもんだ。
僕がパンの欠片をこぼした。それはこんな風に処理されていく。
蝉の死体を処理するのに比べたらシンプルな作業なんだろう。
少しだけ落ち着いた心とともに、僕は立ち上がる。
夕刻、真木悠介の「時間の比較社会学」を読み終えた。
的を外すことが無い、素晴らしい文章だ。
頭を整理するために、また腰をすえて書評でも書こう。
同時代人の硬めのモノをあまり読むことがなかったけれど、
この本の見事さに、あとがきを読みながら涙がこぼれたほどだった。
世界は広い。僕の知らないスゴイものがまだまだ沢山ある。
社会学用語でコンサマトリー（Consumately）という言葉がある。
真木がその言葉を多用していた。
「即時充足的」ということ。
お金のような目的への手段や道具を重視するのではなく、
それ自体面白いこと、納得行くことを追求する。
将来（結果）ではなく、現在（プロセス）に賭けること。
キリギリス。アリではなく。
今時の若い世代にはコンサマトリーな感覚が広がっている。
どうやらこれは単なる一過性の流行ではなさそうだ。
「刹那的」あるいは「怠け者」と呼ぶのは簡単だ。
だけどそこに内包される意味は存外深い。
一蹴などはできやしない。
豊かさは確かに何者かを産んだのではないか？
今をしっかりと受け止め、そこに充足を感じること。
それができぬ限り、幸福は永遠の果てまで先延ばしにされていく。
そうして死や滅びは圧倒的不安となって僕らに迫ってくる。
己を変えることなしに、社会変革等求める無かれ。
心の解放のないところには不毛な永久闘争があるのみだ。
まずは己を満たせ。
その結果として、「持続可能」な変革が起こっていくに違いないから。
今、ここで、何ができるか？
自分の存在が限定されていると嘆かずに、
世にオカシイことが溢れてると恨まずに、
世界の豊かさを感じ取れる心を準備する。
それだけでも一生を賭ける甲斐があるほどの仕事だ。
自分が求めるものは何か？
それに近づくための一番の近道は何か？
生はここにある。
それを忘れちゃいけない。
置き換えないこと。 |
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| 2003/11/11 (Tue) |
不安との対峙 １ |
ときおり不安に呑みこまれて動けなくなることがある。
いつの間にか忍び込んだ小さな種が、
やがて自分のあらゆる場所に絡みつく蔦となり、
思考の、そして身体の自由を奪ってしまう。
そんなことがある。
明日の授業が上手くいかないかもしれない不安。
仕事が見つからず、貯蓄が尽きてしまうかもしれない不安。
このまま自分が何も産み出すことなく死んでいくのではないかという不安。
人からバカにされ、嫌われ、あるいは無視されることへの不安。
体が蝕まれやがて自由がきかなくなることへの不安。
不安は様々な要因からなる混合体だ。
それは無意識のまま僕の内をふらふらと浮遊する。
だが、何かのきっかけでふと気付くことがある。
そうした不安を一つ掴まえ、きっちり分析してみると、
案外大したことではなかったり（→強迫神経症的）、
今考えても仕方ないこと（→目の前の問題からの逃避）だったりするのだ。
アウシュビッツにでも放り込まれていないかぎり（実はそれでさえも！）、
その不安を少しずつ除去していく道は必ずある。
全てが思い通りになることなどありはしない。
一個の人間にとって世界はどこまでも不条理だ。
だからといって何だというのだろう？
それはただ「現実」でしかないじゃないか。
僕らはその「現実」と格闘する方法を身につけなくてはならない。
ひたすら「現実」を見据え、自分が取る行動を決めよう。
絶対的な解などどこにもありはしない。
面倒なことに、僕らはいつだって自由だ。
不安は欲望の裏返し。
僕はそういう風に考えている。
何か得たいものがあり、それが遮られているからこそ、
身体（無意識を含む）はストレスを感じている。
それはとても重要な認識だ。
そこから不安を乗り越えていくための方法論が導かれるから。
忘却を信じてただ嵐に耐えるのではなく。
不安の責任を外部の対象に帰さないこと。
本質的な原因は何かを「求めている」自分にある。
自分が本当は何を求めていて、それが何に遮られているのか。
もしもそれが解ったなら、
求めるものに一歩でも近づくために出来ることをリストアップし、
最も効率の良い道と思う道を選べばよいだけだ。
決めたらすぐに動き出すこと。
動かなきゃ何も始まらないし不安は消えない。
不安に怯え、それに食い尽くされないように逃げ回るのは、
むしろ不安にせっせと栄養を与えているだけだ。
他人と比較して自分がどうかなどと考えることは無意味だ。
自分の中にある醜い欲望を恐れても仕方が無い。
それも「現実」なのだから。
タブーを無くす。一番素直な自分になる。
裸の自分と向き合うことがスタート地点だ。
意識と無意識の対話。
それができて初めて、意識は矛盾しあう欲望の調整装置として機能する。
「自分と向き合う」っていうのをなめちゃいけない。
自分のことを完全に解ることなどありえない。
「わかっている」と思えば思うほど、
思考は無意識化し、不安は制御不能の領域へと拡散していくものだ。
時には他人の方がよっぽどわかってることもある。
顔つきや目つき、行動が隠されたものをも曝け出すから。
実際のところ、僕らはいつもストリップして生きてるようなものだ。
裸の王様。
不安が身体性と密接に結びついているという認識も大事だ。
風邪をひいたときなど、訳も無く様々な不安が強まる。
逆にストレッチ一つで不安が静かに鎮まっていき、
前向きに物事に向かえることだって多い。
身体（無意識）の声にきちんと耳を傾けること。
ところで人に対する苛立ちや同情や心配が固着化されるのは、
それが自分の不安の投影となっているときだ。
心が満たされぬときほど人のことに思考が行く。
対象に寄りかかる事によって自分の不安と向き合わないで済むからだ。
己の不安に対処できない者に、人のことなどどうにかできるはずもないのに。
外観と異なり、これは実はとてもナルシスティックな欲望と関係している。
敵や被保護者を通じて、自分の存在意義や優位性を確認するのだ。
無意識のうちに隠微に味わわれる感情。
そんなものがあることに気づいたらさっさと投げ捨てよう。 |
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| 2003/11/11 (Tue) |
不安との対峙 ２ |
不安の構造の把握は一筋縄にはいかない。
一つの不安は他の不安を育て、互いに複雑に絡み合う。
そうしてそれは無意識の中に埋没していることがほとんどだ。
根本に抱える欲望は簡単には見出せない。
自分の欲望そのものの在り処が解り難い時代になっている。
キレイにお膳立てされた枠の中に納まっているかぎり、
自分の行動を選択肢の中から選んでいるかぎり、
全てが説明可能だという風におもっているかぎり、
金が本当に何かを解決してくれるとおもっているかぎり、
自分が満たされることはない。
それにしても自分の抱える不安を切開するとき、
「社会」からの乖離を恐れる感情の意外な強さに驚かされる。
それは多くの場合「べき」「ねばならない」「してはならない」等という、
強制・禁忌のコトバとして表現されてくる。
一見意識的にも見えるが、根本にあるのは恐怖の感情である。
この恐怖が結果として意識の専制を招き、自分の衝動は抑圧される。
そう、そのせめぎ合いが不安となってぼんやりと浮かび上がってくるのだ。
生まれた時から社会の中で育てられている以上、コトバを話す人である以上、
どう足掻いても僕らが社会から完全に自由で居られることはあり得ない。
様々な社会規範（タブー）が僕らの無意識の深いところに根を張っている。
だが、果たしてこうした乖離への恐怖は「現実的」だろうか？
子供のときのように無力の状態ならば、
或いはファシズムの圧政下に置かれているならば、
確かにタブーを犯すことは直接死を意味するかもしれない。
しかし今のこの豊かな日本にあって、一体何を恐れるというのか？
飢えが人を殺すのではない。
飢えへの恐怖が人を殺し、また殺させるのだ。
僕らがまず振り払わなきゃいけないのはこの無意識の「恐怖」ではないか？
自分の恐怖と対話してみる。
周りをびっしりと覆ったものを削ぎ落としながら。
するとその恐怖の核は案外他愛も無いものである場合が多い。
そいつだけなら、今の僕なら何とかなるはず、というものばかりだ。
恐怖の核にまとわりついているもの、
それは時によって刻みつけられた何者か。
「どうせ自分じゃ駄目だ」という敗北主義。
煎じ詰めるとそれは「面倒くさい」ということなのではないか？
闘うこと、体を動かすこと、突き詰めた思考をすること、
何を面倒くさいと思っているかは時によるけれど。
怠け心は諦めと連携していく。
タブーは文化であるとも言えるし、
実際のところそれは自分のアイデンティティを支えてくれるものだ。
それを破壊してまで生き抜いていく「自信」などなかなか持てやしない。
寄って立つものを自分で創りだすのはキツイ作業だ。
それでも「面倒くさい」に負けることは、
生命力低下のしるしなのではないか？
二つの道がある。どちらも楽な道ではない。
�� 茨の道
自分が求めるものを得るために、闘い続け、
廃墟の上に砂の城かもわからないものを築くのか。
�� 共同体と心中
共同幻想に抱かれ、タブーを守り、
無意識のうちに不安と恐怖を押し込むのか。
僕の中ではとっくに答えは出ているはずだ。
今更戻る場所は無い。
醒めた意識とともに進め。
生はもともとダイナミックなものなのだから。
全てを抱こうとせず、ただ目の前の「現実」と向き合って生きよ。
生を生きよう。
不安との対峙は続く。
でもここには光が射している。
求めよ、さらば与えられん。 |
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| 2003/11/14 (Fri) |
何が現実的か |
昨夜は随分冷え込んでいた。
堀川からせっせとチャリをこいで帰ってきて部屋をささっと片付ける。
友人の実家の畑で取れた野菜を食べる会。
ついつい自分の世界に篭りがちな生活のなかに、
時折こういうささやかなイベントが組み込まれるのが今の僕には有難い。
なんだか「当たり前」のことに帰ってくるような感じで。
こんなときは日頃ちょっと面倒と思うことも楽しいもんだ。
自然と皆が役割分担したりして。
ぼわっとした共同体的な感覚。
それにしても色々な野菜を作ってるもんだ。
山芋、大根、人参、葱。
これに豚とシメジを加えて煮込む。
ダシもよくきいて、芋がホクホクでとにかく美味かった。
素材がいいんだろうな。
すっかり満腹になって一息。
片づけを終えて隣でおいしい中国茶を飲ませてもらう。
いつものパターン。
これがいい。
改めて思う。
僕がここらで付き合っている友人には、
オーソドックスにレールの上を歩いている人がほとんどいない。
どこかで踏み外しちゃってるっていうか。
東京でサラリーマンをしていたときを振り返ってみても、
この界隈の空気は異常といえば異常。
そういうスタイルが「カッコイイ」とかいう雰囲気はないし、
皆それぞれに悩みながら生きてる。
怠けてるかっていうとそういう訳でもないと思う。
むしろ正直さ故にデッドロックに陥ってるだけで。
京都にはそういう人たちの避難所的な空間がある。
だが、時の止まっているこの地の空気に一度浸ってしまうと、
「外界」との隔絶感は強まっていくばかりだ。
一昔前ならそういう人間を許容できたはずの社会が、
随分と硬直化してしまったのではないのか？
そのギャップは今もどんどん大きくなるばかり。
「あちら」へ渡るなら演技をするか変節するか。
皆何かを創りだせる人たちなのに。勿体無い。
この状況は現代社会における意識と無意識の深刻な乖離と関係がある。
分裂を強制する社会など後先長くないんじゃないか？
こんな状況が続くかぎり、社会経済の活力など産まれやしないよ。
ホント。
ここにはゆるやかな共同性の感覚の残影が残っている。
つまらんヤツラに打ちのめされちゃ駄目だ。
ニヤニヤ笑っていなきゃ。
裏でなに考えてるか解らん古き良き京都人みたいに。
年明け頃から真剣に仕事探しをしようと思っている。
とりあえずは翻訳の仕事でもしようかな、と。
どうせ我が身を切り売りしなきゃ仕方がないなら、
できれば単純な仕事がいい。
ごみ収集なんかも結構魅力的かも。
今、僕は「書く」ということを一つの「仕事」にしているけれど、
それは精神的な意味での自給自足、という意味合いが強い。
最初から商品を作っているつもりはない。
溢れ出すほど豊かなものをつくることができれば、
それが「結果的に」商品になるかもしれないのだけど。
現実的に見て、今はとてもそんな偉そうなことは言えないし、
不足分を補うためには身売りをせにゃならん。
好きなことや趣味を仕事にすること、
あるいは自分の信念を形にしていく仕事をすること、
それは「現実的」ではないと言われることが多い。
結局自分を切り売りしなきゃ生きていけないし、
むしろただ苦しくなる可能性が高いと。
確かに自分が愛着する生産物を市場に出すということは、
本質的にギャンブルをするに等しい。
それはズタズタに踏み潰されてしまうかもしれない。
だけど、何かを他の人に分け与えたい、シェアしたい、
という社会的な欲求は健全なものだと僕は思う。
要は意識の問題なんじゃないか？
「市場」に出すな、現実の「人間」を対象にせよ。
金や評価をもらおうとするな、シェアすることを目指せ。
手段としてでなく、仕事そのものを愛せよ。
結果はあくまで結果。
そこに拘泥するかぎり、生きること自体ただの消費になる。
仕事は所詮金を得るために過ぎないという人たちは、
生きる時間の大半を虚無化する。
仕事を金がもらえるかどうかで測る無かれ。
それはあくまでサイコロの目次第だ。
やるかぎりは仕事を愛せ。
それがごみ収集であろうがビル清掃であろうが。
それを判った上で、とりあえず愚痴っぽく
「仕事なんて所詮金のためだけだよ」
とつぶやくのはまあアリということにしておこう。
コミットしすぎて息が詰まる時が確かにあるから。
でもそんな思いが本気の本気なら、そんな仕事はさっさとやめちまえ。
それが現実的ってもんじゃないの？ |
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| 2003/11/16(Sun) |
小さな秋 |
一昨日のこと。
チャリで一人高野川沿いを北へ向かう。
午後3時。晩秋の空気。
低い角度から差す柔らかな光。
赤く黄色くまだらに染まる比叡山。
東山連山に映る大きな雲影
「法」の刻まれた山（東山）をぐるっと巻いて宝ヶ池公園まで走る。
ここを行けば急坂を登らずに山の裏手に回ることが出来るから。
暖かな光が心の動きを停止させる。
酔っぱらっているみたい。
ゆっくりゆっくりペダルを踏む。
木陰に入って冷気に身体を包まれると、
突然現実に引き戻されるような感じ。
岩倉を西に向かって走りながら、辺りの風景を見回す。
このあたりはここ数年で随分宅地化が進んだ。
地下鉄が国際会館まで通じるようになってから
建てられたらしい真新しい家がいくつも立ち並んでいる。
それでもぽつぽつと畑は残っていて、
畝から大きな大根が肩を現わしていた。
いつの間にか北稜高校まで辿り着く。
高校生が授業を終えて帰っていく。
金曜日。
今の俺には関係ないな、金曜日。
再び南下。
山を一気に下り降りて深泥池のところに降りてくる。
池の周りは葦でびっしり覆われている。
さすがにもう枯れ色に染まっているけれど。
一段と低い角度になった陽射しを背に受けて、
しばしボォッと浮島を眺める。
立看板にはこの浮島が氷河期からあったことが書かれている。
死んだ草が沈みきらずに腐り、その上に再び草が生い茂る。
それを繰り返しながら浮島はそこにあり続ける。
一万年。
ふと思い出す。
昔付き合っていた女の子とこの辺をチャリでふらついていた時のこと。
ひどい別れ方をしたというのに、
何だかその頃のことがとても懐かしく思われたりして。
俺は間違っていたかな、なんて。
時は流れ、記憶はその生々しさを失い、優しさだけが投げかけられる。
浄化は静かに進行する。
死したものの上に再び生が産まれ来る。
真木悠介の言葉が再び頭に浮かんでくる。
近代自我は人生の意味を時間の彼方、すなわち過去か未来に疎外していく。
それは結局ニヒリズムに堕ちゆくのみ。
現在それ自体へのコンサマトリーな意味の感覚をつかむこと。
そう、そうだ。
ただ「今」を満たせばよい。
時間も、人も、世界も、手段に変えてはいけない。
それ自体の中に価値を見出せぬものにかかずらうな。
いいんだ、これで。
少しずつ進んでる。
何度転んでも、また起きあがって、
そうして生きていけばいい。
高野川まで戻ってきてチャリを止める。
目覚ましに靴を脱いで足をもんでいると、
はらはらと真っ赤な葉が落ちてきた。
見上げるともう残る葉は少ない。
秋も終わりが近い。 |
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| 2003/11/16 (Sun) |
意識と無意識について |
ここ最近、再び「ねばならない」感覚が強まっていた。
ちょっと自分に仕事を課しすぎていたかもしれない。
過ぎたるは及ばざるが如し。
過剰に背負い込んでも結局能率は下がる。
やっぱり基本は楽しむこと。
全然楽しめなくなったら、そんなものはとりあえず投げ捨てちまえ。
やりたくなったらまたシレッとやればいいんだから。
二三日力を抜くうちに随分いい方向に向かってきた。
今日はひさしぶりに競馬場へ。
エリザベス女王杯はなかなかの好レースだった。
三冠馬スティルインラブとの叩きあいを制したアドマイヤグルーブ。
ずっと一番人気に押されながら勝てずにいた鬱憤をここで晴らす。
武豊もこの馬には思い入れがあったんだろうな。かなり嬉しそうだった。
予想が好調。
今日は７戦４勝。外したのも際どいのが多かったし。
この調子ならＨＰに競馬コーナーでも作ってみるかな。
ってまた要らん仕事増やしてどないすんねん。
。。。
ＨＰを見てもらってる人から「無意識って何？」と質問された。
自分にとってはあまりに当たり前の概念と化しているので、
改めて説明をするとなると結構苦労するもんだ。
でもこれは「生の原理」第0章として執筆中のテーマ。
しばし頭をひねって書いてみる。
読んでみてください↓
意識と無意識について |
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| 2003/11/19 (Wed) |
雨の合間に １ |
今日は例の物理実験が実際に始まって2回目の授業。（→10/16雑感参照）
水曜日と木曜日に違うクラスを担当しているが、
最初にやる方はどうしても手探りになってしまうので
なかなか思い通りに行かずにガックリくる。
反省を生かして改善するので次の日はだいぶマシになるのだけど。
ここで僕に要求されている仕事とは、
高校一年生の選ばれたエリートたちに
「研究」とはどういうものなのかを伝えること。
そして「研究」を行なうために必要な基礎知識を伝えること。
基本的にはそういうことだと思っている。
自分が不思議に思うことを「科学的に」調べていく方法。
推論（仮説）を立て、それを検証していくこと。
温度計や電流計などの測定機器の正しい使い方。
データロガーの使い方。エクセルを用いたデータ処理法。
考察を含めたレポートの書き方。
等等等。
どういう実験をしたらよい「お手本」になるのか？
「研究」である以上、僕自身が興味を持っていてしかも答えはわかってない、
それでいて高校一年生に理解可能で、なおかつ彼等が興味を持てそうなこと。
それが2時間×3コマという枠のなかにぴったりおさまること。
そんなもん在り得るのかよ〜。
と泣き言をいいながら、数十時間の予備実験を重ねたあげく
何とかひねり出した実験案。
それにしてもただ「スキル」を与えるだけじゃあ僕としては癪だ。
それでは「研究職人」を養成しているだけだ。
そもそも何で研究なんかすんねん？食うためか？
うーん、どうもそうらしいのが世の流れ。
ここで僕が要求されているのはまさにそれだ。
あ〜あ。
もとから有利なエリートをさらに有利にしてどないすんねん？
僕はそんな流れを馬鹿馬鹿しいとは思う。
それでもこのプロジェクトを実質的に支えている友人が、
それを解った上で敢えて確信犯的に、
御託を並べてぐだぐだ言う「ダメ」京大生なんかにさせるより、
素直に真っ直ぐ東大へ送り込めばいい、その方が世のため人のためだ、
等とシニカルに言い放つとき、
ま、そんなもんかもしれん、と思ったりして。
今の世の中その方が健全に生きられるのだろうし。
後ろで舌を出しながら、高みの見物気分で。
こっちが楽しんまなきゃやってらんね〜っちゅうねん。
詰め込みに慣れているのか、受身な態度が目立つ高校生。
僕が高校生の頃もこんなだったかな？ま、そうかもしれん。
「当たり前」のことを少し破壊して動揺させるくらいの
いたずらはしてみたいもんだ。
ということで。。。
石油などのエネルギー資源はあと50年もしたら無くなって、
きっと随分不便なことになる。
それに今のイラク戦争みたいなのが頻発するかもしれない。
さて、君ならどうする？
a) 人類を救うために科学技術の推進に貢献する
b) 自分が逃げ切る道を見出すために、世界のことをよく知っておく
c) 誰かがなんとかしてくれるからそれを待つ＝ま、なんとかなるでしょ
d) 怖いので考えない事にする
e) 興味が無い
さて正解は？
a)東大に行け
b)多分正解
c)それもありだけど、最後まで笑ってられないなら負け
d)馬鹿というか哀れ？
e)さようなら
ぐらいの感じでしょうかね。
さすがに実際にこんなクイズをやったりはしないけど、
密かにその辺りの感触を見たりしながら、ということで。ね。 |
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| 2003/11/19 (Wed) |
雨の合間に ２ |
ところで僕が燃料電池の実験をすることにした理由。
・たまたま教材用のモノが転がっていたから
・仕事でやっていただけに知識を持っているから
・巷でちょっと噂になっているので客寄せパンダ的に
という程度か。
産業界でのこいつのバブルはちょっとヤバイ感じ。
不景気の中、新たなビジネスチャンスとして期待されているけど、
どの程度の市場規模になるかは未だ不透明な情勢。
ちなみに燃料電池はエネルギー問題を抜本的に解決するものでは決してない。
確かにそれなりの省エネデバイスにはなるかもしれないけど。
燃料電池自動車 ＝「NOX、SOX除去能力を高めた自動車」
家庭用燃料電池 ＝「省エネ型ガス給湯器」
くらいに考えるのが正解。
な〜んだつまんないと思う人、がっかりする人、
ま、そんなもんです、人生は。
自然に存在していない以上、水素を「エネルギー源」と呼ぶのは苦しい所。
多くの場合、天然ガスなどの資源から製造されていて、
結局化石燃料燃やしてるのと本質的に変わりは無いのだから。
水の電気分解でいくらでも取れると思うのはやめて。（→某高校某理科教師）
その電気はどっから来るねん。。。
そういうことを含めて高校生に教えてあげてようかな〜、と思っていたけど、
わざわざ親切に夢を砕いてあげるのもどうか。
ちゃんと説明しようとすると結構大変なのに、そんな時間はなさそうだし。
今のところは質問されるまで放っておけばいいか、と。
自分で気付くように。
気付かないならまぁそのまま行ってみて下さい。
･･･ 等などシニカルなことも一方で考えつつ、
それでも授業は一生懸命やってる。つもり。
彼等が既にわかっていることを把握するのが大変で、
話すことを絞り込めないのが最初の壁。
2時間×３コマに詰め込んだ内容を
ちゃんと時間配分するのは難しい。
今日は結果的に居残りまでさせてしまった。。。
見かけ上自主的に、だけどそれって僕が仕事で残業してたのと一緒やん。
課されたノルマが終わらないから。
ノルマを課したのは僕だ→反省。
最後までわりと一生懸命やっていた3人に「お疲れ様」、って感じ。
（楽しんで残ってくれてたなら嬉しいけど、そこまでは言い切れんな。。。）
さて、内容を削るか、それとも教え方を効率的にすれば消化できるのか。
でも別にきっちりと終わらせることが大事なわけじゃないんだよなぁ。
雰囲気を味わってもらいながら、細かい知恵を積み上げてもらうこと。
もともと負けん気の強そうな彼等に、
お、面白い世界もあるもんだ、
と感じさせることができればとりあえずこっちの勝ち。
迎合することなく、しかも押し付けにならず、さじ加減が肝心。
ちゃんと一人の人間として対さなきゃ。
ま、ぼちぼち。
。。。
今日は昼頃から雨が断続的に降っている。
学校へ行くときと、帰ってくるときと、
運良くその合間を縫うことができた。
自転車で30分の道のりは傘を差して走るにはちょっとツライ。
御所を通りかかったとき、銀杏の匂いが漂った。
まだ残っていたのか。
逃げるように走り抜ける。 |
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| 2003/11/23 (Sun) |
言葉を学ぶこと １ |
今日はTOEICの試験を受けに行ってきた。
同志社の新町校舎に人がワラワラと集まっていた。
随分沢山の人が受けるもんだな、と改めてびっくり。
皆が英語の勉強をする。
自分の市場価値を高めるために。
そうしてわざわざラベルを貼ってもらいに行く。
自ら進んで処理されに行く家畜のようなもの。
自分も含めてだけど。
気持悪い。
内容のないテストだ。
要は知能テストみたいなもんでしょ？
あいさつの仕方とか、コピー機の使い方とか、仕事の探し方とか、
そういう生活の基本みたいなものをテストされるだけ。
言葉が分からないと、すなわち周囲に同調できないと、
その社会においては人間以下の存在にしかなれない。
「英語」の文化が世界標準になってくるとき、
僕らは否応なくそこに巻き込まれていく。
幼稚園からやり直してください、ってね。
一旦習得された言語は「道具」というより「自分の一部」である。
様々な人との出会い、関係の積み重ね。
それは実際に海外に住んで生活することを通じての体験の場合もあれば、
仕事で海外の取引先と交渉したり、留学生と話したりという場合もあろう。
外国語の本を読んだり、映画を通じての場合もあるし、
語学の授業や、あるいは教科書を通じての場合もある。
それは何らかの形での「共有」を通じて身体に沁みこんでいくもの。
そうして自分の中には様々な「文化」が流れ込んでいる。
それゆえ、そう、こういうテストを受けるのは、
自分の構成要素に外からレッテルを貼られること。
緩やかに連なっていた有機体は裁断され、交換可能な部品と化す。
いやいや、便利ですよ、便利ですとも。
どうせ人の想像力なんて知れているんだから。
ある人の「体験」を理解する必要があるときに、
それを数字で何点とかいう形でとらえるのはどれだけ楽なことか。
グダグタと自分の歴史を喋り出してもキリがないし。
バカにも分かるように、自分を単純化しなさい、数値化しなさい。
それが自分を高く売り抜けるコツ。
まぁそういう「客観的」な状況はどうでもいいや。
「言葉を学ぶ」ことは僕にとって（主観的に）どういう意味を持つのか？
そのほうがずっと大事なことだ。
それを改めて整理してみよう。
第一段階：自分の生存を維持するための手段として
言葉を学ぶスタート地点だ。
これは生きてためには金が必要というのと同じ感覚。
見知らぬ街で言葉が全く何も分からないでは苦労が絶えない。
旅のような一時的な接触なら、身振り手振りで何とかなる場合もあるけど。
TOEICのようなテストは基本的にこの段階に重点が置かれている。
学校で英語を学ばされる場合、事情は異なっているが、
本質的な部分は同じことだろう。
テストでよい点をとり、良い高校、良い大学に入り、出世することが、
生きていくために必要だという前提のもとに学ばれるのだから。
食うもんがなくて野垂れ死にするとかいう切迫した状況ではないけど、
本人が目の前のテストを切り抜けないと死にそうだというのであれば、
心理的には同じことでしょ。
そこで学ばれる英語が実際に外国で使えるかどうかは別の話だけど。
一言で「生存を維持するために必要なもの」と言っても、
それは極めて主観的なものだし、人により、あるいは時によってバラバラだ。
そもそも言葉なんて喋れないくらいで本当に死にはしないし。
本人が言葉を学ぶことを「不可欠だ」と感じているのなら、
それはこの段階にあると考えていい。
ここでは言葉はあくまで「道具」である。
何かに辿りつくための踏み台。
生きるため、お金を稼ぐため、人に気に入られるために
言葉を「覚えよう」としているのである。
それは自分に内在化されてはいない。
それはいつも「外」にある。
〜（２に続く） |
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| 2003/11/23 (Sun) |
言葉を学ぶこと ２ |
（続き）
第二段階：「共有感覚」の成立基盤として（相対化→普遍化）
異なる言語環境にある程度の期間晒されていると、
自分の中に新たな言語構造が定着する。
するとそのコトバを使うことは「当たり前」のことになり、
もはや語る相手は「外人」ではなく、一個の人間として現れてくる。
それは結局、思考する自分、欲望する自分自身が、
その言語構造によって規定されるようになるということでもある。
そうして言葉は既に自分の「内」にある。
わかりやすい例を持ち出して言うなら、例えば学生が会社に就職した際に、
業界用語を使いこなすようになるまでを考えればよい。
たとえ同じ日本語でも、異なる世界では異なる言葉が使われる。
「ジャーゴン」ってやつ。方言だって一緒のこと。
それは単語だけの話ではない。思考パターンを含めた文化の総体だ。
いくら呑まれていないと思っていても、それは無意識の内に深く食い込む。
そう、この段階になって初めて「他者を理解する」可能性が成立する。
アメリカ人としてでなく、電気屋としてでなく、関西人としてでなく、
一個の人間として理解すること。
自分がその文化に食い込まれ、いつの間にかそのパターンに従って考え
また感じるようになったとき、その「共有されたもの」ゆえに、
他者を自分と置き換えて考えることが可能となる。
想像力という言葉はこの置き換えて考える能力を指す。
言葉を学ぶということは想像力を鍛えること。
すなわち自分を敢えて他文化に侵食させること。
自分のなかに元の自分とは異なるものを抱えること。
それを「相対化」と呼んでもよいけれど、
実際のところそれは単なる観念操作のようなナマっちょろいものではない。
分裂、自己破壊とさえ言ってよいのだから。
それを通じて初めて他者の存在を「知る」。
ちょっと前に「わかる」ということについて考えたが、
そのときもこの辺りのことに思い至った。（11/5「柘榴」参照）
他者を「わかる」ことは普遍性へ近づく一歩だ。
それは同時に自己破壊への一歩でもある。
「個」にしがみ付くものにはそれができぬ。
ちなみに一旦「わかった」ことは固定化されやすい。
第２段階以降の言語習得における最大の課題は、
ディテールを詰めていくことを通じ、
「わかる」感覚を磨き続けることだ。
それは集中力を維持する、ということとも同値。
本来言葉が完璧になる、などということはあり得ない。
不自由することが少なくなる、というだけだ。
だが、不自由しなくなると人は学ぶことを止める。
あらたな問題が発生するまで眠りこけるのだ。
そうこうするうちに、いつしかその言葉は有効性を失っていくのに。
言葉を学ぶこと。
それは自分の持つ世界の情報を Update すること。
思考が無意識の内に沈潜し、凝縮し、固化してしまう前に、
再びかき混ぜて活性化させること。
無意識のうちに「当たり前」だとしてきたものに、
新たな文化をぶつけることを通じて。
それが生命力を再び取り戻させてくれる。
考えて欲しい。
僕らはいつも様々な異なる社会のブロックに連なっている。
家族、友人（高校の、大学の等など）、同僚。。。
それぞれの場面で異なる言語状況を生きているはずだ。
習慣に従い、無意識に、幾つもの「仮面」を被りながら。
そこに何も問題が存在しないのであればよい。
だがもしもそうでないとしたら？
言葉を学べ。
あらたな「仮面」を模索し続けよ。
脱ぎ捨て、脱ぎ捨て、より良いものを探せ。
無限の「仮面」を被って生き続けよ。
そうして初めて「自分」の基盤が見えてくるのだから。
逆説的な話ではあるが。
。。。
昨日あたりから一気に冷え込んできた。
ついにホントの冬がやってきた感じだ。
かじかむ手を擦りながら、
冷たいコーラを買いに行く僕はアホ？ |
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| 2003/11/25 (Tue) |
歴史の再生 |
過去も未来も失うことがある。
未来はない。
過去は思い出さない。
ただ目の前の出来事を処理をする機械として生きる。
全ては壊されて、意味を失ったまま。
ただガレキの上を歩くだけ。
それはある意味、とても自然なことではないのか？
動物的という感じもするし。
が、どうだ、その異様な感じは。
それを「にんげん」として考えてみるとき。
機械。そう、それは機械と呼ぶのが相応しい。
でもそれが「今を生きる」っていうことではないのか？
そうかもしれぬ。
だが果たして、その魂に生きていく力はあるのだろうか？
そこが一番大事なことじゃないのか？
考えて見ろよ。
そうしている方が生き延びるのに都合が良いじゃないか。
余計なことを考えてもそれはまたやっかいなことを引き起こすだけだ。
ぶっ殺されるかもしれないだろ。
ただ目の前に現れてくるものを上手くかわし続ければ良いじゃないか。
生きていく力とはそういうものじゃないのか？
「個」の生存を最優先に突き詰めて考えた時、行き着く先は機械化・動物化？
そもそも何故生きる？
何故死なないで生き残ろうとする？
何かやり残していると感じるからではないか？
何をやり残してる？
生命は何を目指す？
「個」が幻想だなんて考えたことはないか？
それは意識が意識に向けられることで作り出される麻薬。
閉じられたループの中をぐるぐると回るお猿の電車。
だが、人は常にそのフィルターを通じてモノを見ることを強制されている。
そうしてそれを外挿して他の生物にさえも「個」を押し付ける。
身体を作る物質は交換され、流転する。
たんぱく質は、脂肪は、骨はどうやって作られる？
ちょっと見方を変えれば人間なぞは遺伝子の乗り物。
そいつが周りの物質を集めては撒き散らして、ある種の運動を継続させる。
そうなると、人の身体さえも遺伝子の作り出すマボロシではないのか？
じゃあ遺伝子は？そいつは一体何をしている？何かを目指している？
大昔、全ての地球の生命は、
アダムのようにポンっと作られた一つかそこらの運動体が、
増殖し、分裂し、変化し、そうして作られてきたのではないか？
卵子が細胞分裂をして一個の個体をつくるように、
この地球上に広がった生命体のネットワークが、
実はそのアダムの成長した姿にすぎないことを
一体誰が否定しうる？
進化論というナンセンスを繰り返すのは「個」の幻想に憑かれた者だけ。
しがみつくな。流れ行くパラダイムなどに。
弱肉強食が世界の掟、生物は皆競争している、などと、
そういう「物語」が便利な場合もあるだけで、
所詮僕らの見えてる世界は小さなものだということを
どうして分からないというのだろう？
僕らが新陳代謝され続けるアダムの細胞だとすれば、
目の前のことを処理する機械のようなものか？
どこを目指す？それはアダムのみの知るところ？
人にそれを知ることは許されていない？
人の細胞が持つDNAは人類の歴史を表現する。
或いはさらに遡り、生命の歴史そのものが刻まれている。
全ての生命の歴史が人に刻まれるわけでなく、その一支流ということだが。
ところで歴史とは？それは蓄えられた「情報」のことではないのか？
では「情報」とは一体何だ？秩序？低エントロピー？
僕らはそのDNAのデータをスキャンし、
そこに詰め込まれた情報の指示に従って形成される。
その歴史を繰り返しスキャンして生き続ける。
そして時おりエラーを起こしては新たな情報を作り出す。
ちょっと待て、それがエラーだと決め付けるのは進化論者のやり方だな。
ひょっとするとアダムの意志によるのかもしれないわけだし。
ところで歴史の記憶媒体は、
DNAのみによって担われるとは限るまい。
文化なるものも伝達される「情報」に違いない。
DNAのようなデジタル情報に比べれば、劣化の早いアナログ情報だが。
持ち運び可能な媒体であるところを見ると、
案外それはカセットテープのようなものかもしれない。
そうだ。厳密に言って、僕らは歴史から逃れることなど出来やしない。
僕らは歴史によって規定されている。
そうしてその歴史を作り出す主体の一部であることも間違いない。
「過去も未来も失って」などというのは、
何だかとてもポイントレスな感じではないか？
「個」の幻想という強力な磁石を近づけすぎた時、
運ばれる情報は損なわれ、記憶は消える。
歴史を再生（PLAY）し、歴史を記録（RECORD）せよ。
そこに意味がないというものは、
生命のラインから外れていると言えやしないか？ |
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